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地震保険の補償不足をカバー

上乗せ補償と賢い活用方法とは?

平野 敦之平野 敦之

2019/05/24

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イメージ/123RF

大規模な地震災害が立て続けに起こっていますが、地震保険は火災保険の50%の金額までしか補償されないなど加入に制限があります。しかし損害保険会社が個別に地震保険で不足する分に上乗せできる特約を取り扱っているのです。

地震保険の上乗せ補償とは?

はじめに地震保険の主な基本ルールについて改めて確認しておきましょう。地震保険そのものは法律に基づいて政府がその仕組みに関与する仕組みの官民一体の保険制度です。

・居住用の物件が対象(店舗併用住宅もOK)
・地震保険は単独では契約できず、火災保険の30%~50%の間の契約金額で加入
・保険金の支払い基準は4段階で実際の損害を支払うものではない

地震保険は政府が関与しているため、どこの保険会社で加入しても補償内容や保険料に違いはありません。但し、この記事のテーマである地震保険の上乗せ補償は各損害保険会社が独自にやっているものです。そのため取り扱いをしていないところもあります。

地震保険ではいくら不足する?

地震保険は火災保険と一緒に契約しますがそれぞれ目的が違います。火災保険では損害を受けたものを再購入するものに対して、地震保険は被災後の生活再建を目的にしています。地震で家が全壊しても地震保険でも不足するのです。

実際にどのくらい不足することが想定されるのか考えてみましょう。建物を対象に保険に加入を考えるものとします。

例)建物評価額2,000万円 火災保険2,000万円 地震保険1,000万円

地震保険は火災保険の50%までしか加入できないため、このケースではあと1,000万円が不足します。しかし公的な支援制度には「被災者生活政権支援制度」があります。被害の程度によるものの条件を満たせば、最高300万円が支払われます。

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地震保険の「上乗せ補償」とは?

地震保険に上乗せ補償をつける方法も一つではないので上乗せ特約を中心にいくつか解説していきます。

・損保会社の地震保険の上乗せ特約
すべての損保ではありませんが、何社か取り扱いをしています。その多くが火災保険にある「地震火災費用保険金」と呼ばれる補償を拡張しているものです。

これは「地震による火災」で損害があった場合に最高50%の補償を上乗せできるものがほとんどです。地震そのもので全壊した場合は対象にならないので事前に内容をよく確認してください。なお数社ですが地震による火災以外、例えば地震で建物が全壊したときも補償する上乗せ補償を取り扱うケースもあります。しかしいずれにしても保険料負担はそれなりにするため見積もりを取ってよく検討する必要があります。

・少額短期保険の地震補償保険
損害保険会社と別に少額短期保険(別名ミニ保険)と呼ばれる保険会社があります。この中に単独で加入できて地震災害の補償をする商品があります。最高900万円なので限度はありますが、単独で加入できることや保険金の支払い基準が地方自治体の発行する罹災証明の基準に連動していることが特徴です。

・住宅ローンの上乗せ補償
住宅購入する人が対象になりますが、このところ団体信用生命保険などに付帯させる補償が拡充傾向にあります。その一つに自然災害(地震・噴火・津波による災害を含む)の補償について、住宅ローンの支払いを一定期間(6回、12回、24回)免除するプラン、地震等で全損の場合に50%ローンを免除するプランがあります。

通常の住宅ローンに上乗せ金利が別途必要になるため、シミュレーションして検討する必要はありますが、住宅購入者には一つの選択肢です。

・家財への保険でカバー
上乗せの補償とは少し違いますが、考え方の一つとして覚えておきたいのが、家財への地震保険の加入です。地震保険は居住用の物件やそこにある家財も対象にしているため、家財そのものにも地震保険に加入することができます。

建物の火災保険・地震保険の契約に家財をプラスすることもできますし、まったく別の契約で家財に火災保険・地震保険をつけることもできます。

上乗せとは違いますが、家財に地震保険の加入をしていないなら、敢えて家財にも地震保険に加入するという考え方もあります。受け取った保険金をどのように使うかは自由ですのでこのような選択もあるのです。

地震保険の上乗せ補償の活用の仕方

地震保険の上乗せ特約・補償について問題点があるとすれば、何よりも保険料の負担です。
もともと地震保険は、火災保険の補償の半分であるにも関わらず保険料は火災保険と同じくらい、もしくはそれ以上になるケースもあります。そこに上乗せで保険料を支払うことは長期間に渡ってなかなかの負担です。

そこで地震保険の上乗せ補償についての使い方ですが、必ずしもずっと加入し続ける必要はありません。住宅ローンに上乗せ金利を支払うタイプでは難しいのですが、それ以外は普通に保険の特約ですから、契約するかどうかは自由です。

例えば住宅ローンの返済が進んで半分返済が終われば、地震保険で補償される上限の50%で収まる計算になります。このように状況に応じて地震保険の上乗せ補償を見直し、変更していくことも考えてみてください。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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